言葉遣いのルール
ビジネス文書では、書式にルールがあるように、言葉遣いにもルールがあります。
時候の挨拶や感謝の言葉、用件を伝えるための言い回し、文章を締めくくる挨拶などが主なものです。これらの言葉を覚えておけば、自分で言葉を考える必要が少なくなるため、文書作成が楽になります。また、相手に対する敬意をきちんと伝えることができ、好印象にもつながります。

頭語
前文のいちばん最初に書く言葉が頭語です。
もっとも一般的なものが「拝啓」で、聞いたことがある方も多いでしょう。
これは〈謹んで申し上げます〉という意味になります。
「拝啓」をもう少し丁寧にしたものが「謹啓」です。「拝啓」よりも高い敬意を表します。
少し固い印象を受けますが、特にあらたまった文書のなどの場合は、「拝啓」よりも「謹啓」を使ったほうがよいでしょう。
相手からの文書に対する返信の場合は、「拝復」を使います。
〈謹んでご返事いたします〉という意味の言葉です。
「前略」には〈挨拶を省略します〉という意味があります。急ぎの用件などの場合に使います。
時候の挨拶は書かずに、すぐに本題に入ります。
ただし、目上の方に送る文書の場合は、「前略」は使わず、きちんと挨拶を書いたほうが良いでしょう。
頭語の後に句読点は必要ありません。一文字あけて、時候の挨拶から文章を書き始めます。
時候の挨拶
頭語につづいて、時候の挨拶です。季節によって用いる言葉が違います。
たくさんあるので、どの言葉を使えばいいのか迷ってしまうかもしれません。
特別に難しい言葉を使う必要はないので、自分でも親しんでいて使いやすい言葉を選ぶといいでしょう。下の表も参考にしてみて下さい。

これらの言葉を使って「○○の候」や「○○のみぎり」で文章を始め、相手に対する祝意を続けます。
企業や団体に対してはその発展を祝し、個人宛ての場合には相手の健康状態などを気遣います。
祝意に用いる敬称と挨拶にも、それぞれ慣用表現があります。次の表を参照して下さい。

これらの慣用表現を使って文章を書くと、次のようになります。
- 1月の挨拶…初春の候、貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
- 4月の挨拶…陽春のみぎり、皆様におかれましては益々ご隆盛の段、心よりお慶び申し上げます。
- 8月の挨拶…晩夏の候、貴下にはますますご壮健のことと大慶至極に存じます。
- 12月の挨拶…歳末のみぎり、貴店いよいよご繁盛の由、心よりお慶び申し上げます。
あまり長くならないように気をつけて、季節感が醸し出されるような文章を書くように心がけましょう。
主文
前文で時候の挨拶を述べたら、主文に入ります。
主文に入ることを示す言葉を、「起辞」といいます。
「さて」「ところで」のふたつを覚えておけば問題ありません。
返信文の場合は、「○○の件についてですが」など、相手の文章を受ける表現を使っても良いでしょう。
内容が変わるところで、「つきましては」「次に」などの言葉を挟むと、文章がわかりやすくなり、リズムも良くなります。
その他の部分では接続詞をなるべく使わないように意識すると、さらにメリハリを出すことができます。
末文
主文が終わったら、末文です。
今後の指導や文書に対する返事など、相手になにかを頼む場合は末文でその旨を伝えます。
例)
- 今後ともよろしくお願いいたします。
- 何卒お力添えをいただきますようお願い申し上げます。
- ご多忙中恐縮ではございますが、ご返事のほどお願い申し上げます。
最後に文書全体をまとめます。
「まずは」や「取り急ぎ」といった言葉で切り出し、全体の内容を受けた文章にします。
例)
- まずは用件のみにて失礼致します。
- 右取り急ぎご案内申し上げます。
- 略儀ながら書中にて御礼まで申し上げます。
結びと結語
文書全体の結びも時候の挨拶です。
相手の体調や会社の発展を気遣う文章にしましょう。
例)
- 時節柄、どうぞご自愛くださいませ。
- 皆様方のご無事息災を心よりお祈り申し上げます。
また、文章のいちばん最後に来る結語は、頭語ときちんと対応したものを使う必要があります。
下の表では左右の欄の中でのみ、頭語と結語の組み合わせは自由です。
(例:「拝啓」には「敬具」「拝具」「敬白」が使えます)

間違った言葉を選んでしまうと、文書全体の印象も一段落ちてしまいます。
簡単なことですが、最後の一文字まで注意を払いましょう。
少しずつ身につける
これらの慣用表現をすべて覚えるとなると大変です。
電話応対の場合と同じように、少しずつ実践しながら身につけていくのがいちばんの近道です。
ただ、文書の場合は相手がいなくても書く練習はできます。
日頃から、単語帳などを活用して覚えていくのもいいかもしれませんね。
また、敬語表現についてはLesson 2-4、Lesson 2-5も、あらためておさらいしてみて下さい。
Lesson 4-4 まとめ
日頃から、単語帳で表現を覚えたり、文書作成の練習をして少しずつ身に着ける。
- 頭語…前文の最初に書く。
- 時候の挨拶…季節感を醸し、相手に対する祝意を述べる。
- 起辞…主文に入ることを伝える。
- 末文…主文のまとめや、時候の挨拶、感謝の言葉を述べる。
- 結語…頭語と対応した言葉を使う。